吉幾三 『酒よ』ロングバージョン 東京さ行って山を買った男

『大阪で生まれた女』(BORO)という作品のオリジナルは18番まであるみたいです

『ロード 』(THE 虎舞竜)は全13章まで作らていました

 

どちらも名作過ぎて、まだこのブログで取り上げることが出来ていません

残念ながら一度もフルで聴いたことはなく、相変わらず生半可に生きている自分がいます

 

そして、この『酒よ…追伸』

原曲『酒よ』の間へ、後からはめ込まれたようには思えないほど自然な形に仕上げられています

改めて、「吉幾三」さんの作詞力に驚かされました

原作に付け加えること5つ、全部で計8番、最後に繰り返しでの終結です

 

「吉幾三」さん自身が

シングル・プレイのつもりが

いつか気付けば ロング・バージョン・・・ (稲垣潤一/ロング・バージョンより)

・・・の心境で作られたたどうかはわかりませんが、この「ロングバージョン」を知ったことで、昭和の名曲『酒よ』の意味をやっと気づかせてもらった気がします

 

『酒よ…追伸』  1994年

作詞・作曲:吉幾三

 

アレンジのこだわり

編曲は原曲と同じく、「池多孝春」さんが手がけられたのでしょうか(『与作』のアレンジは最高級の響きを与えてくださり、あの感動は忘れられません)

 

イントロから力の入りようが違います

一流のオーケストラと選(え)りすぐりの男性コーラス陣を従えての、堂々たるご本人の登場です

 

歌い出しから抜群の安定感です

ほんの少しのタメを伴いながらの歌唱は、横綱相撲を披露しているかのような余裕が感じられます

気持ち遅れて立ち、胸をかしての軽やかなさばきともいえるこの歌い方、風格さえ漂います

 

そこには、鉢巻をし、法被を羽織って踊って歌う、あのコミックソング歌手の姿はありません(あの頃のパフォーマンスも大好きですが)

 

彼の集大成的この作品は、もの悲しい郷愁と大切な家族愛を、ずっしりと重く、かつ壮大に物語っていくのでした

 

原曲の1番と2番の間にこんな歌詞を持ってきます

【2番】

雨の中 酔いつぶれ 都会の夜に

持ってきた 夢捨てた こともある

なぁ酒よ 何を捨て 何を拾えばいい・・・

 

9人兄弟の末っ子として生まれ、父親の反対を押し切り中学を卒業するとともに青森から上京してきた彼です

演歌なんて絶対に売れないからと諭(さと)されながらも、あの名作『雪国』を発表しました

その後の活躍は皆さんもよくご存じだと思います

 

彼は本当に東京で馬車を引き、銀座にIKZOブランドの山を築いたのかもしれません

 

間奏のこだわり

 

話は曲に戻りますが、第一の間奏(約54秒)に驚かされます

まぁ、控えめに言っても「久石譲」さん(よく知らんけど…)もビビること違いなしの壮大なアレンジが展開されます

歌詞が始まる直前、軽やかなギターの音色は、しっかりと演歌ファンの心をつかんで離しません

 

【4番】

何事も遠いほど すべて恋しい

何も無い暮らしさえ 笑えたな

(中略)

ふるさとが近かった こわれた赤電話

「何」という言葉を重ねるところと「遠い」「近かった」の対比です

歌詞の内容と共にこの4番はとてもお気に入りの一つです

 

 

6番

飲むほどに しみて来る 十五の春が

遠くから 聞こええてく 汽車の音

このあたりからのヴァイオリンは、あたかも先導するかのように響きを強めます

歌詞の内容や歌い方とタッグを組み、完全に泣かしに来ています

そんな作戦に、すっぽりとはまった心地よさを感じつつ酔いしれるのでした

 

二つ目の間奏はシンプルでしかも余韻が楽しめます

 

家族愛へのこだわり

【7番】

なぁオヤジ 若い頃 話してくれないか

ばあちゃんや おふくろの

話を なぁ オヤジ

 

一年ほど前から両親と同居しています

昔から父親と多くの会話をした記憶はありません

ある夜、無口な父親が珍しく昔のことを話し出したことがありました

 

いつも多くを語らず文句も言わず、素敵な生き様をみせてくれました

ダメな息子でしたが・・・

なぁ、オヤジ・・・

ありがとう

 

最後の間奏が始まります

とても力強いピアノの旋律は、荒波のように流れていきます

ぐっとこらえていた感情を吐き出すかのように、クライマックスへとつなげるのでした

 

【最終章 そして繰り返し】

冷酒と 酔いどれと 泪(なみだ)とふるさとと・・・

年老いた 父と母 子供と

なあ 女房(おまえ)  わかるよ なぁ酒よ

 

ピアノの嘆きとコーラスのコラボ、オーラスのドラムは聞き逃せません

 

9分06秒の長くも短いこのドラマ

家族に、中でも女房に捧げた、愛ある渾身の叫びだったように感じられました

 

昭和の男の秘めた熱い思いを、このがしっかりと受け止めたに違いありません

 

「吉幾三」さんの活躍を目にするたびに、心から応援したくなります

彼の才能・人柄、多くの魅力を持ち合わせた、私のとってとても大切なアーティストなのでした

 

今後とも更なる活躍をしていただき、世界の各地で山々を買い占めてもらいたいものです。

(「俺らこんな日本いやだぁ」 ってか!)

 

 

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