「緋牡丹のお竜」こと矢野竜子(藤純子)が渡世で大活躍の映画『緋牡丹博徒』シリーズの主題歌です
歌良し、映画良し、役者良しの「映画&主題歌」としては代表選手的存在です
皆さんも、「観て・聴いて・惚れて」ください(若き藤純子さんと高倉健さんに出逢えます)
緋牡丹博徒 昭和43年(1968年)
作詞・作曲:渡辺岳夫 映画監督:山下耕作(第1作)
娘 盛りを 渡世に かけて 張った体に 緋牡丹 燃える
「藤純子」さん(当時なんとビックリ22歳)は、文字通り体を張っての演技と精一杯の歌唱を披露します(綺麗さに驚き、年齢を知ってまた驚きました)
映画の冒頭、バクチ(手本引き)のいかさまを見破った「お竜」さんは、こう啖呵(たんか)を切ります
”竹花一家といえば、この岩国界隈(かいわい)では筋の通ったご一家”
”このおとしまえ、どぎゃんつけなはっですか!”
(アップで捉えたきりりとした横長の眉毛、男衆ならだれでもみとれるでしょう)
女の 女の 女の意気地(いきじ) 旅の 夜空に 恋も 散る
「いくじ」はもともと「いきじ」の音変化によるものだったようです
「お竜」さんには、女の意地というより、やはり女の意気地(いきじ)という言葉がふさわしい気がします
シンプルといえば、これほどシンプルな曲調を私は他に知りません
しかも、出だしとサビがかなり似通っているのです
まさに「潔さ」を極めた作品ではないでしょうか(「シンプル・イズ・ベスト」です)(関係無いけれど「シンプルライフ / レナウン」は、好きなブランドでしたが残念です)
とにかく、なぜか少年の心に残り続ける歌詞と旋律なのです
「娘盛り」と「渡世」と「緋牡丹」
これ以上のインパクトはありません
歌が始まりわずか55秒、文字で起こせばたった21文字、すべてを持っていかれました
映画「緋牡丹博徒」
若き「高倉健」さんを拝見することは今までなったのですが、相変わらずというのは変ですが、シブいです
傷を負った「お竜」さんを介抱するとき、初めて「緋牡丹の入れ墨」を見てしまいます
ここからの「健さん」の視線・しぐさ・所作
何も言わず何も聞かず、ただ黙々と手当に専念します(「健さん」はこの頃から、やはり健さんでした)
ワル役に「大木実」さん、脇のお笑い担当に「若山富三郎」など贅沢な配役です
そして、なぜか惹(ひ)かれたのが、かなり脇役の誰も知らない「沼田曜一」さん(私も名前を初めて知りました)
悪役専門です
ここでもイカサマ師「蛇政」という素晴らしい名前をいただいていました
いちゃもんを付けられ、それをうまくかわした後の表情が何とも言えません
薄ら笑いからの、恐ろしいほどの憎々しさ(お見事です)(何度となく見返したくなる場面なのでした)
世間では、第六作『緋牡丹博徒 お竜参上』(相手役 / 菅原文太)が代表作のように言わることもあります
しかし私は、「清川虹子」さん親分が登場するこの第一作がお気に入りです
(ちなみに彼女は、『楢山節考』(昭和58年)に出演し、70歳にして初ヌードを披露したりと、素晴らしい演技を見せる女優さんでした)
緋牡丹シリーズ最終作『緋牡丹博徒 仁義通します 』(第8作)
昭和47年(1972年)、多くのファンに惜しまれながら、結婚を機に一時引退されたのでした
結婚後引退と決めていた彼女ですが、東映の社長に就任したばかりの岡田氏に頼まれ、やむなく最後の主役を務めました
『純子引退記念映画 関東緋桜一家』(藤の挙式の直前、1972年3月に公開)
当事の東映スターを含めオールキャストにて制作されました(「沼田曜一」さんの名前が見当たらないのが残念です)
「緋牡丹のお竜」こと「藤 純子」
最後まで、きっちり「仁義通します」
男 衣装に 飾っていても さしたかんざし 緋牡丹化粧
「藤純子」→「寺島純子」→「富司純子」(ふじすみこ)
名前は変われど、品のあるお化粧は緋牡丹をもしのぎ、「富司純子」さんとなられても世の人々に愛され続けることでしょう。
P.S.
ヒボタン(緋牡丹)の花
緋牡丹とは、牡丹の中でも、とりわけ赤く紅色した品種ぐらいに考えていました
しかしどうも牡丹ではなく、サボテンの一種のようです
緋牡丹は一般的な緑色のサボテンではなく、赤や黄色、ピンクなどの可愛い色をしたサボテンでした
花は薄ピンク色が基本で、観賞価値の高い、美しい花が咲きます。 (”暮らし~の”より)
いつどんなタイミングで咲くか分からないサボテンの花
日中に開いて、夕方になると閉じてしまう性質は、どこか寂しげで、「お竜」さんの背中で咲くのがお似合いです
ふとこんな歌詞が思い出されました
君が そだてた サボテンは 小さな 花をつくった 《『サボテンの花』 / チューリップ》
以前から、サボテン好きで「財津和夫」さん好きな私は、「緋牡丹」を育ててみたくなりました
映画「緋牡丹シリーズ」を観ながら、いつ咲くか知れないサボテンの花を待ち続けるのも悪くはない気がするのです。
(第1作が一番のお気に入りなどと言っておきながら、実は第6作以外はまだ見ていません)(誤解を招く表現だったと反省しつつ、残り6作を鑑賞したいと思います)
了
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