作詞:なかにし礼 作曲:川口真
『人形の家』 昭和44年(1969年)
1969年発売のこの曲については、リアルタイムでほとんど記憶にはないのですが、かすかに耳に残るぎりぎりのラインです
バッハ的に例えるならば、「記憶線上に残るアリア」(?)
叙情的、旋律的な特徴の強い独唱曲なのでした
始まりの歌詞は
“顔も みたくない程 あなたに ・・・・ なんて”
最初の注目点は、イントロのベースの音色とコーラスでしょうか
そして「なんて」の「なん~ぅん~~て」の歌唱法、たまりません(2番でもでてきますので、しっかり聴いてみることをお勧めします)
これほどまでに嫌われた経験のない(たぶん、気づいていないだけかも)私は、逆を返せば、きっとこんなにも愛されることもなかったのでしょう
“とても 信じられない 愛が 消えた いまも“
素晴しい倒置法です。
作詞家「なかにし礼」さんの作品はどれも素晴らしく『手紙』『石狩挽歌』『グッド・バイ・マイ・ラブ』・・・題を聞いただけで泣けてきそうです
“ほこりに まみれた 人形みたい“
早くも、物語は佳境に入っていきます
有り余る声量で、サビまでの橋渡しを、ゆっくりとじっくりと丁寧にこなしていかれます
皆さん、もう泣きぬれる準備はできているでしょうか
哀しい唄・辛い想い・健気な気持ちを歌った曲を専門に聴いている私は、老眼鏡はどこに置いたかよく忘れますが、ティッシュボックスは肌身離さず ”部屋のかたすみに忘れる” なんて許されないのです
“愛されて 捨てられて 忘れられた 部屋のかたすみ”
そして2番は
“待ちわびて 待ちわびて 泣きぬれる 部屋のかたすみ”
この歌詞の存在が、「なかにし礼」さんのすべてを物語っているといっても過言ではありません(たぶん過言です)
“私は あなたに 命を ・・・・“
ここまでずっと抑えながらためてきた気持ちを、最後の最後に開花させるこの旋律です
作曲家「川口真」さんは、『片思い』『他人の関係』『積み木の部屋』と何度となく、私の心の中に、奇跡的ともいえる旋律を投げてこられます
(「千鳥」・「雪舟」と共にわが岡山の偉大なる星なのです)
最後の歌詞「〇をあずけた」
「〇をかけた」では、意志が強くですぎるようです
この言葉に、ここに登場する女性の、そして当時の「弘田三枝子」さんのイメージが、ピッタリとはまります
弘田三枝子
戦後間もない頃に生まれ、戦後のキャンプでポップスやジャズを歌っていたという彼女です(ちなみに、キャンプといっても、バーベキューをしたりはしません)
その後、GSブームなどに乗り遅れ、カムバックを果たした曲が『人形の家』(当然、ガソリンスタンドとも関係ありません)
ダイエット等により大幅にイメージチェンジした彼女は、まさに「人形」のようだったみたいです
それはプロとして、身も心もこの歌に「寄せて」いきたかったのかもしれません
最先端のファッション及びその美貌(びぼう)で、健気な女性の思いのたけを表現されたのでした
彼女のその後の変遷(へんせん)について、いろんな意見があることを承知しています
ただ当時出来うる最大限のパフォーマンスを彼女が披露されており、素直に感動し心から称賛したいと思います
現在の彼女がどうであれ、昭和の名曲『人形の家』になんらマイナスの影響を与えるものではありません
今もってたくさんの人達を魅了する、偉大で貴重なる「昭和の芸術品」として、大切にしまっておきたいと思います
そして、時々お蔵から取り出して眺めることは、老後の何よりの楽しみとなるでしょう。
P.S.
『人形の家』の編曲はいたってシンプルであり、その象徴的なのが「タンバリン」です
タンバリン
ドラムベースが中心の今の音楽にあって、この「タンバリン」のリズムはとても新鮮です
サビでのリズム打ちは耳にとても心地よく、マネしたい衝動に誰しも駆(か)られるでしょう(そういえば、最近カラオケ店にこのタンバリンが置かれていないのは、寂しい限りです)
そして「タンバリン」といえばこの歌
タンバリン リン リン タンバリン タンバリン リン リン タンバリン ・・・
この部分のフレーズしか出てこず(最近やたらとこの経験が増えています)、さっそくグーグル様に教えをこうと・・・
『タンバリン、凛凛(りんりん)」
こんな題だったっけ?
「ロッカジャポニカ」などという、意味不明の言葉も添(そ)えられていました(「ジャポニカ学習帳」なら、よく覚えているのですが…)
??
どうもアイドルグループの曲らしいとことを、ユーチューブ先生が知らせてくれました(意外といい曲でした)(制服姿も可愛いし…)
いやいや、私が求めていたのはなんか違います
再度、じっくりと案内していただくと、出てきました
『真実一路のマーチ』(作詞:星野哲郎 作曲:米山正夫)「水前寺清子」大先生の作品を、不覚にも忘れていたのでした
久しぶりに、彼女の「底抜けの明るい声」と「タンバリン」の響きに、たくさんの「元気」いただきました
元気で 歩こう タンバリン タンバリン タンバリン(チャン チャン)
ダイエットのため、毎日のように田んぼ道を歩いている私にとって、今日の散歩は少しだけ足取りが軽くなる予感がいたします。
了
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水前寺清子 ありがとうの歌 / さわやかの唄(原曲) 昭和45年
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