新たな年の始まりと共に、聞いているのは相変わらずの昭和
今年も昭和を愛し、昭和を懐古し、昭和を敬いたいと思います
そんな昭和一色で身にまといながら、少しでも皆様の心の癒しをお届けできれば幸いです
銘酒「のどごし〈生〉」を飲みながら、新年早々なぜか一人ぼっちを楽しんでいるのでした
『悲しい酒』 作詞:石本美由紀 作曲:古賀政男
「美空ひばり」さんの再来とよく評されていた「森昌子」さん
正直、『哀しみ本線日本海』『越冬つばめ』を歌う彼女が最高の歌唱と信じていた私は、少し不満でした
234万回再生されていた、この映像を見るまでは…
ギターの音色と人の声のしじまに
イントロのギターは「木村好夫」(知らないけど、たぶん…)さん、孤高のサムライのように職人技を披露します
彼のつま弾く弦の音色はどこまでも悲しく、どこまでも正確で、どこまでもわが気持ちを心酔の世界へと連れて行ってくれます
わずか24秒の間に、至福な思いと同時に、これからの世界の名作を甘受するであろう期待に心を躍らせます
ひとり酒場で 飲む酒は
気がつけば、手にしていたマイクはゆっくりと、そして絶妙なタイミングで定位置に収まっていました
そしていよいよ始まるのでした
”ひぃ~~~とぉ~~~り~~”
ひと時の静寂(しじま)を縫うように、芸術的な発声を披露してくださいます
神から授かったようなお声は、放たれた瞬間から臨場感持ってはるか彼方へと響き渡ります
何度聴かせていただいても酔いしれます
裏声とファルセット
「ファルセット」とは裏声の一部の技法のようです
裏声には他に「ヘッドボイス」「ミックスボイス」などがあります
(ヘッドボイスは頭で響かせる発声方法/ミックスボイスは地声と裏声の中間の発声)
「美空ひばり」さんの歌唱を聴いていると、そんな細かな違いを超越した「裏声」に圧倒されます
飲めばグラスに また浮かぶ
”飲ー — — め~~~ば”
ここの突き抜ける感じは、なぜかオペラを思い起こさせます
見たことも聞いたことも、そして知識も一切ない高尚そうなあのオペラです
そんな私にも、オペラについてもっと知りたい!本物を聞いてみたい!
などど、身分不相応な衝動となんとも不思議な興味を持たさせてくれるこの歌唱、この裏声なのです
自分でも言ってることがよくわかりません
あらゆる冷静さをも失わせるような、言葉では決して表現できない別次元の世界を体験させてくれたのでした
一番好きな3番の場面が訪れました
一人ぼっちが 好きだよと
この直前に首を振るしぐさをみせます
強がりです
女の意地があったかもしれません
でも、心の裏側が自然とにじみ出てしまったのです
言った心の 裏で泣く
作詞家「石本美由紀」先生の代表的な傑作選にどうしても入れたい作品です
一番でふれたあの歌い方、”ひ~~と~~り~”とは全然違います
十分なタメを置いてからの”ひと~り”なのです
3番からの、先行する演奏やギターの音色がたまりません
”裏で〰〰〰”
そしてもう一つ、ここの揺れです
すぐに船酔いしてしまう私ですが、こればかりはどんなに揺れ動いても心地よい限りなのです
泣いて 恨んで 夜が更ける
ラストの仕上げに入ります
わずか言葉にしたらこの12語ですが、約52秒かけて丁寧に幕が引かれました
いずれにしても、唄に合わせた演奏者の緊張感までも伝わってくる、素晴らしい舞台芸術を鑑賞でき、心より感謝いたします
この歌には間にセリフが入ることが多いようです
森繁久彌さんが「歌は語れ、せりふは歌え」と言っておられました
『悲しい酒』(234万再生動画)はまさにこの言葉に集約されます
私のようなものがどんなに説明しようが、言葉だけが上滑りしており、この作品の素晴らしさが一向に伝わらなかったかと思います
しかし私の中で、先ほどの森繁さんの言葉が、一人ぼっちの雑煮のお餅と共にずっしりと腑に落ちるのでした。
【2023年元旦…と記入予定でしたが、だらだらとお酒を飲んでしまい、遅れましたことをお詫びします。本年もよろしくお願いいたします。】
了
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