「シャンソンの女王」越路吹雪さんは「魅せる歌手」でもあると記されています
越路吹雪
『愛の賛歌』大ヒットの翌年、昭和36年『ラストダンスは私に』は発表されました(当時、母の胎内にいた私は、越路サウンドがかすかに聞こえてきたような… 記憶はありません)
ひたむきな情熱と純粋さを持ち合わせる女性
昭和28年、初めてフランス・パリへ行き、シャンソン歌手「ピアフ」のステージを見ます
その夜日記に「ピアフを二度聴く。語ることなし。私は悲しい。夜、一人泣く。悲しい、寂しい、私には何もない。私は負けた。泣く、初めてのパリで」 ”ウィキペディア”より
戦後復興間もない日本から、苦労してパリへ乗り込んだその夜の彼女の日記
「私には何もない」「私は負けた」の「越路吹雪」さんが好きです
知れば知るほど魅力的な女性
紅白出場歌手が、当日事故で出れなくなり、彼女にNHKから依頼がきます
新年会で泥酔状態だった彼女は、時間が来ると「じゃ いってくるか」
紅白本番で、見事に歌い上げます(1952年/「ビギン・ザ・ビギン」) ”ウィキペディア”より
「じゃ行ってくるか」の「越路吹雪」さんがとてもとても好きです
ラストダンスは私に 昭和36年(1961年)
作詞:岩谷時子 作曲:M.Schuman
翻訳家 岩谷時子
「越路吹雪」さんを語る上で、彼女の存在は欠かせません
あなた 好きな人と 踊って らしていいわ
宝塚の男役出身の彼女にあえてのこの言い回しでしょうか
話はそれますが、宝塚音楽学校時代、彼女は規則破りの常習犯であり、また女の世界を潔く生き抜いた方でもあります(美貌というだけでいじめられる女の世界、見かねた彼女は、そんな弱い人を見過ごすことなど出来ないのです)
男気も兼ね備えた彼女が「らしていいわ」なんて言われると、世の男性は堪(た)りません(特に私はギャップ萌え燃えです)
やさしい 微笑みも その方に おあげなさい
「おあげなさい」
だれしも、この余裕を持ちたいものです
たとえそれが、肩ひじ張った、見せかけだけにしても・・・
この彼女のこんな生き方に「越路吹雪」さんを重ね合わせ、益々惹かれていくのでした
けれども 私がここにいることだけ どうぞ 忘れないで
最後はやはり、とてもかわいい女性に戻ります
ちなみに2番では ”いつでも私がここに居ることだけ”と漢字表記になっています(ネット検索情報なので、真偽のほどは微妙かも)
「居る」にすると「そこに存在している」「座っている」の意味が強くなります
彼女の素敵な訳詞があればこその、ヒット曲の数々なのかもしれません
胸に抱かれて踊る ラストダンス 忘れないで
決して忘れません
「越路吹雪」さんのすべてを知り尽くしている「岩谷時子」さん
この素晴らしい訳詞は、主人公の彼女の良さ、越路さんの良さを、最大限に引き出します
昭和的シンプルアレンジ
60年近く前に作られた作品です
完成度の高さに驚かざるを得ません
特に「木琴」と「アコーディオン」(たぶん)がいい仕事をしてくれています
これらの音色は、何でこんなにも物悲しく、そして「古き良き昭和」への郷愁を誘うのでしょうか
アウトロの最後は、管楽器が不協和音?っぽく奏(かな)でられ、昭和独特の世界感をダメ押します
意外と思われるかもしれませんが、越路さんは家庭的で、家事全般をこなします
極度のあがり症の「越路吹雪」さん、マネージャーとしてずっと支えてきた「岩谷時子」さんに、本前はいつも背中に「トラ」の文字を書いてもらい、勇気づけられていたとのことです
このお二人には生涯、不協和音は響くことはなかったのではないでしょうか。
&
P.S.
原曲とカバー曲
『ラストダンスは私に』(Save the Last Dance For me)
コーラスグループ「ドリフターズ」が原曲みたいです(ベン・E・キングがリードボーカルです、志村もカトちゃんも参加していません)
作詞者(ドク・ポーマス)は少し体に障害があったため、せめて「ラストダンスだけは残して置いてほしい」との思いを詩に込めますした
元々は男歌です(岩谷時子さんは、なんとうまく女性視点に置き換えているのでしょう)
「ベン・E・キング」の優しくささやく声に、コーラスが華(はな)を添えます
ユーチューブが「次の動画」で推薦する「ブルース・ウイルス」の歌唱バージョンと共に、お勧めいたします
日本でも、数々のアーティストが越路さんのカバー曲をリリースされています
「今井美樹」さんが歌われると、聴いているこちらはふんわりふわふわで、ずっと踊っていたい気分にさせてくれます(ダンスなど絶対ムリな私です)(あくまでも気分です)
そして有名どころの「萩原健一」御大(おんたい)さまです
すべてがオシャレでカッコよく、躍動感の塊(かたまり)ようでした
究極のこのアレンジを聴いていると、なぜか彼こそが「越路吹雪」の正統なる伝承者のように思えてきたのでした。
了
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