山崎ハコ 『織江の唄』 呪いを込めて藁人形に釘を刺すような女性ではありませんでした

「田川」(地名)・「ボタ山」・「遠賀川」(おんががわ)

『青春の門』を読まれた方なら、忘れられない郷愁キーワードです

ありません

初めてこの本を読んだ頃の記憶、勧めてくれた友人の泥臭い顔、しわくちゃだった文庫本の匂い

久しぶりに聴いた瞬間に、これらすべてが思い出されてくるのでした

 

この曲の作詞者「五木寛之」さんのは、1番の歌詞の中にきっちりとこの三つ言葉を入れてくれていたのでした

 

織江の唄 1981年(昭和56年)

 

作詞:五木寛之 作曲:山崎ハコ

 

遠賀川 土手の向こうに ボタ山の

三つ並んで 見えとらす

 

訥々(とつとつ)と情景を語る言葉を「見えとらす」で括(くく)られています

 

昔の人は、自然のものに対する扱いがとても丁寧だった気がします

方言を知らない私にも、あらゆるものに敬意を払う優しさのようなものが、伝わってくるのです

 

イントロから2番に終わるまで、しみいるようにギターの音だけが静かに響きわたります

耳を澄まして聴きたい曲がここにあるのです

かけがえのないこの幸福感なのです

 

牧 織江 (信介の幼馴染)

 

信ちゃん 伸介しゃん

うちはあんたに 逢いとうて

初めてこの「伸介しゃん」を聴いた時の驚きは忘れられません

本の中で密かに憧れたあの「織江」さんが突如現れた気がしました

 

健気で…美人で…足が少し不自由で…か細い綺麗な声で…(小説なので顔と声はあくまでも想像ですが…)

そんな彼女が「伸介しゃん」からの「逢いとうて」です

 

切々と語りかけるこの流れ、「遠賀川」の流れのごとく、涙も流れ流れて止まらないでしょう

 

月見草 いいえそげんな 花じゃなか

あれは セイタカアワダチソウ草

外来種で繁殖力の旺盛なセイタカアワダチソウ草は、平凡な草花として少し邪険に扱わている気がします

花言葉は「生命力」

 

頑張って背高(せいたか)しながら生きてきた彼女だったのかもしれません

たどり着いたのは、どこにでもあるこの雑草だったと「五木寛之」さんは言われているのでしょうか

 

私は、「月見草」のイメージそのもの織江さんだけに、2番の始まりのこのセリフに惹かれるのでした

 

「山崎ハコ」

 

明日は小倉の 夜の蝶

サビ前のこの一節に彼女の力量を見せつけられます

 

1番が ”カラス峠を越えてきた”

3番が ”ばってんお金にゃ勝てんもん”

 

どこまでも落ちていきそうな低い声とそれぞれに微妙なタメの違いをみせます

この気持ちの入りじっくりと聞いてみてほしいのです

 

織江も 大人に なりました

先ほども言いましたが、”織江も”の「お」の出し方も、3番まですべて違います

私は、2番の”織江も”が特に好きです

どうにもならない感情をぶつけた後の、この音の抜き方にしびれます

 

3番では、どこか諦(あきら)めたように、また全てを達観したように、静かに最後のこの言葉をしっとりと呟(つぶや)きます

 

幼いことから苦労して育ち、デビュー後もいろんな出来事があったようです

すべてを飲み込んできた「山崎ハコ」さんは、どこか「織江」と重なって見えるのでした

 

楽器

2番までのギターだけの音色から、間奏部分よりもう一つ、彩(いろど)りが加わります

 

この楽器が何だか分かりません

高い音は「フルート」に、低い音は「尺八」のようにも聞こえてきます

 

「フルート」「ピッコロ」「クラリネット」「オーボエ」そして和楽器の「尺八」「笙(しょう)

どれも大好きな音色です

 

思い出づくり

 

そして何故か、テレビドラマ「想い出づくり。」を思い出しました

脚本は「山田太一」さんです

主演は「古手川祐子」さん「田中裕子」さん「森昌子」さんの3人とかなり異色なキャストのドラマでした

 

この音楽を手掛けた「ザンフィル」というパンフルート奏者

音色と言い、名曲過ぎて忘れられません(脚本・演じ手も最高でした)

 

昭和の名曲「織江の唄」は、同じ昭和の名ドラマ「想い出づくり。」を思い起こさせてくれたのでした

ちなみに、当然の流れとしてこのドラマのDVDを「Amazon」や「楽天市場」で調べてみましたが、ちょっとだけ?高額でしたので、今回はぐっと我慢です(旧作ドラマDVDについては、すべてこのパターンです)(古いテレビドラマのサブスクを心より願っています)

 

「想い出」という言葉には、振り返りというネガティブな響きが付きまといます

しかし、今を楽しみながら積極的に今の思い出を作っていくという考えはとても新鮮で、今からでも始められそうです

 

「想い出づくり。」は当分見れそうにないので、「山崎ハコ」さんのファーストアルバムをお勧めいたします

 

『飛・び・ま・す』 1975年(昭和50年)

 

昭和枯れすゝき」と「シクラメンのかほり」という2大ヒット曲が渦巻くこの年

このようなアルバムが発売されていたことに衝撃を受けました

 

「山崎ハコ」ファン初心者なので、改めて彼女の軌跡を追っていきながら、思い出づくりに励みたいと思います。

 

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P.S.

昭和を懐かしみ、昭和の歌に親しみ、当時はよかった・素晴らしかった、とこのブログでさんざん書いてきた気がします

『織江の唄』を聴きながら、そんな自分にふと嫌なものを感じたのです

 

恵まれて育った人間のエゴではないかと・・・

 

青春の門

 

やはりできれば、小説「青春の門」を読まれてから『織江の唄』を聴いていただければよりお楽しみいただけるかと思います

『筑豊編』に始まり『再起編』まで上下12冊、新し本棚の一番上の左端に並びました(当時はとにかくヒマでした)

 

読書の習慣が一切なかった私に、小説の面白さを教えてくれた最初の一冊でした

あまりにも偉大な父との葛藤を繰り返しながら、青年らしく真っすぐに、たくましく生きていく主人公こそ「伊吹伸介」、伸介しゃんなのです

 

反面教師

この小説で私は学びます

父たるもの、偉大過ぎてはいけないことを

 

24歳までろくにバイトもせず、あげくに大学中退(除籍)

その後10年間親元で暮らし、給料は飲み屋街とギャンブルに全ツッコミ

何とか結婚するも・・・

 

うちの子たちは恵まれています

何のプレッシャーもなく、すくすくのびのび育ってくれました

 

『青春の門』

いま一度読み返したいような気もしますが、なんとなく怖い

当時の感受性そのままに読み進める自分は、もういないかもしれません

 

新たな発見、新たな思い出になることを期待しつつ、実家の本棚の左上に手を伸ばしてみよう…かな?

 

究極 『六月の雨』 伝説の高校生フォーク・デュオ 40年の時を経て…

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