ところで育った突然ですが、「木の実ナナ」さんの歌う『うぬぼれワルツ』をご存知でしょうか
うぬぼれの強い私は、この歌が大好きです
テレビドラマ『探偵物語』第6話のラスト部分でBGMとして使用されたようです
アイマスクをした「工藤ちゃん」も愛したであろう、この名曲『うぬぼれワルツ』を作曲されたのも「西島三重子」さんだったのです
昭和の名曲と言えば、必ず名前の挙がるこの『池上線』
そしてある日、偶然『井の頭線』という歌に出合い、再びこの名曲を訪ねてみたくなったのでした
阪急沿線しか知らない私ですが、東急「池上線」・京王電鉄「井の頭線」へと私鉄沿線の抒情(じょじょう)的な歌の旅に出かけてみたいと思います
(五郎ちゃんの『私鉄沿線』は具体的な駅名が登場しないので、今回は残念ですが立ち寄れません)
(関係ないですが、映画『阪急電車』もとてもいいんです)
『池上線』 1976年(昭和51年)
作詞:佐藤順英 作曲:西島三重子
古い電車の ドアのそば 二人は黙って 立っていた
話す言葉を さがしながら すきま風に 震えて
「古い電車」「すきま風」
この歌詞に、当時の東急電鉄の関係者は、ずいぶん苦い思いをしたと言われています
電鉄会社の思惑はさておき、この二つの言葉はとても重要で外すわけにはいきません
大げさに言わしてもらえば、『池上線』の世界そのものを物語っている気がします
昭和50年代の繁栄と衰退を「フルーツショップ」と「商店街」を登場させることにより、昭和の風景に織り交ぜながら、叙情(じょじょう)豊かな作品として仕上げられています
健気な彼女は、男女の恋愛模様・微妙なすれ違いを ”すきま風に 震えて” に託すのでした
池上線が 走る町に
あなたは二度と 来ないのね
池上線に 揺られながら 今日も 帰る私なの
冒頭にも触れた『うぬぼれワルツ』そしてこの『池上線』
似ているようで全く違う作品の数々に、音楽性の豊かさが感じられ、作曲者としての「西島三重子」さんに、尊敬と感謝の念があふれるばかりです
池上線の沿線は、当時の面影をほとんど残してはいないでしょうが、せめてこの作品だけは永遠に残り続けて欲しいと切に願います
『池上線ふたたび』という作品もリリースされるなど、現在も広く活躍され続けておられます
この「ふたたび」バージョンは演歌色が混じり、時の流れを感じます
偶然にも、次なる作品にも原曲発売からすぐ後に、「あれから」と題して素敵なアレンジを聞かせてくれるバージョンがありました
井の頭線(オリジナル) 2004年
作詞:田久保真見 作曲:網倉一也 編曲:矢野立美
永福町で電車が 停まる 急行の 待ち合わせ
そのまま「普通電車」に乗っていてもいいのですが、当たり前のように急行へと乗り換えていたあの頃…
一日24時間では足りなかったわけでもない(どちらかと言えば時間を持て余していた)のですが、なぜか人の波に追い立てられるように…
一人取り残されるような不安と漠然とした焦り…
様々な思い出を呼び起こしてくれそうな、そんな歌詞からこの曲は始まりました
「あさみちゆき」さんは、伸びのある歌声で、しっとりと、またしんみりと聴かせてくれるのです
ちなみに「あさみち」「ゆき」さんではありません(一応念のため)(「ちゆき」は若くして亡くなられたお兄様「智幸」からの名づけのようです)
ドアが開いて吹き抜ける 風 想い出が 降りてゆく
思い出も一緒に「降りていく」・・・
私の青春に、これほどの思い出も、ロマンチックな出来事も一切ありませんでした
でもその切ない気持ち、わかる気がします
というか、よく分からないのだけれど、わかってみたい気持ちが強くなるのです
走るように 生きてるあなたと
歩くように 生きてた 私
そうです
この「私」は確実に各駅に止まる「普通電車」なのかもしれません
「急行」(あなた)に乗りたくても乗り遅れてしまったのか…
それとも・・・
彼女みずから、すすんで・・・・
ひとり帰る 井の頭線で
今でも ふと 好きだと思う
「降りていく」/ 「風鈴」/ 「軒先」・・・
歌詞の中に出てくるこれらの表現・言葉・そしてこの曲調は昭和感たっぷりです
まるで、近くの池でアメンボを見つけた時ような「よくぞ今まで生き延びてくれた」と思わずにはいられません(
「感謝・感激・雨・霰(あられ)」 なのです
『井の頭線』の存在、「あさみちゆき」さんの存在を知ることができ、心から幸せを感じるのでした
(「あられの匠・白木」さんという会社から『感謝感激飴あられ』という商品があったのが、これまた感激でした)
何度か聞いていると、このオリジナルアレンジがとても好きになりました
この素晴らしいアレンジのベースがあってこその、次に続く『井の頭線・あれから』だったことにやっと気づきます
『井の頭線・あれから』 2005年
【編曲:千代 正行】
『井の頭線』という曲、「あさみ ちゆき」という歌手をいったいどれくらいの人がご存じなのか、私には分かりません
正直、それほどヒットしたとは言えません
ましてや、「その後」を歌った『井の頭線・あれから』となりますとかなりレアーな部類に入るかもしれません
しかし、ふとしたことで初めて耳にした、イントロのギターの音に魅了されました
澄みきった音源に、身も心も持っていかれたのです
表現力の乏しさがなんとも歯がゆく、ぜひともご自身の耳でご体験ください
ちなみに、編曲者の「千代 正行」さんは、「森田童子」さんの作品をたくさん手掛けておられました(「森田童子」さんといえば、静かにしんみりと聞かせるスペシャリストです、このアレンジも間違いないでしょう)
名曲には、ピアノとギターの音があれば十分です
そんなことを教えてくれるこの演奏に、つやのある声と伏し目がちな横顔が重なれば、もうこれ以上の贅沢は無いでしょう
曲は全く同じですが、雰囲気はかなり違っています
帰りたいと 思う季節に
帰れないと わかってるから
”から~”のところが、自声から独特なファルセットに変わります(原曲とはかなり違います)
素敵すぎます
演歌色がにじみ出てきたこのバージョン
首までどっぷりと昭和歌謡にハマっている私には、この”から~”を含め、最高の贈り物となりました
ひとり帰る 井の頭線で
あなたに ふと 呼ばれ たようで
今は亡き「森田童子」さんの音楽性を引き継いだかのように、ギターの音色が、どうしても忘れることのできない面影を優しく包み込みます
時を経ずにこのアンサーソングともいえる作品『井の頭線・あれから』の発売です
製作者皆さんの「どうしても世に出した」という熱い想いが伝わってきます
作詞/田久保真見 作曲/網倉一也 編曲/矢野立美・千代 正行
そしてあさみ ちゆき
もっと知って欲しい、そして忘れられない、忘れてはならない日本のアーティストの方々なのでした
「こんないい曲があるんですよ」
・・・と誰かに ”ふと 呼ばれた ようで”
と、まぁこのような思いから僭越ではありますが、駄文にて紹介させていただきました。
|
石井聖子 『この・・・駅で』 バラードを超えた、たぐいまれなる抒情歌
P.S.
『聖橋で』も心に響きます
「あさみ ちゆき」さんは、約1年ほど前からYouTubeチャンネルを開設されていました
びっくりしたのは、とてもお若いことです
25歳でデビューされていた彼女のCDのジャケット写真しか見たことがなかったので、最初は違う方かと思いました(伏し目がちで、いつも悲しげでした)(写真のイメージは実の恐ろしいものです)
とても明るく、素敵な人柄が伺えます
17~8年経った今のほうがお若いのです
実は密かに、もしかしたら妹さんか、娘さんではないかと少し疑っています
そんなこんなで、チャンネル登録を速攻ですませ、いろんな動画を拝見しています
中でも『鮨屋で…』という曲にハマっています(作詞:井上千穂/作曲:杉本眞人)
父と娘を歌った歌は多くはない気がします
父親として、私も寿司屋のカウンターで、仲良く娘と「カニサラダ」と「びっくらポン!」
を楽しみたいものです
また、【アカシアの雨がやむときをアカペラで歌唱!】
彼女に歌唱力の高さが伺える、素晴らしい動画となっています
そして気になる曲が一つ
『聖橋で』
あなたは 売れない 小説を
ためいき ついて 書いている (作詞:阿久悠)
このブログを書きながら聞くと、この言葉が胸に刺さり、ジワリと沁(し)みてくるのです
動画の締めのご挨拶に、最後は岩手弁?らしき言葉で閉じられます
いつも幸せな気分にさせて頂きありがとうございます
「元気にしちょってくださいね~」
了
コメント