泉谷しげる 『春夏秋冬』 春でも夏でも秋でも冬でも、最高のメッセンジャーです

歌謡曲しか心に入れなかった私の十代

ときおり思い返してみても、なんであんなに固執していたのか、今でも不思議でなりません

確かに、真理ちゃんは普通に可愛く、百恵ちゃんの「赤いシリーズ」は歌もシナリオも素晴らしく、五郎ちゃんの「カックラキン大放送!!」は面白かった(本格的にみづえちゃん押しになったのもこの放送からのような気がする)

 

買ってもらったギターもクラシックタイプ

『禁じられた遊び』をぎこちなく弾いていたあの頃

左手の薬指の痛みが妙に懐かしく、今でも愛おしい

 

でも、しかし、なぜ?

こんな貴重で素晴らしいもう一つの昭和な音楽が、すぐ裏隣にあったなんて・・・

 

振り向きもしなかったあの頃のフォークソング

『春夏秋冬』が気になりだしたのいつのころからだろう

二十代半ばで初めて出会い、四十代の頃にやっとフォークソングをかじりつつ、六十目前で「泉谷しげる」さんの世界に憧れています

 

春夏秋冬 1972年(昭和47年)

 

作詞・作曲 泉谷しげる

季節のない 街に生まれ  風のない 丘に育ち

夢のない 家を出て  愛のない 人にあう

 

何もなかったあの頃、誰もがほんのわずかな希望にすがって生きていました

「泉谷しげる」さんの素敵な言葉の一つ一つが、若き日々を呼び覚ましてくれるのです

 

2番の歌詞は、さらに私を惹(ひ)きつけます

となりを横目で のぞき  自分の道を たしかめる

またひとつ ずるくなった  当分 てれ笑いがつづく

 

以前にも書きましたが、当時よく朝一のパチンコ店で並んでいました

自分の不甲斐なさをごまかす為に、駅へ向かう人々を意味もなく横目でにらんでいた気がします

 

自分の道など確かめる気もなく、今でも思い出すたびに「てれ笑い」…

いや、『苦笑い」さえ浮かべる資格はないでしょう

 

そんな最低な私にも、『春夏秋冬』の歌詞は勇気をくれます

 

漢(おとこ)の生きざまはかくありなん

ライブ映像の衝撃

 

歌い出しまえからの雄たけび

イエィ~~~~~~~~・・・・

腹の底から伸びること十数秒

 

わずか4分半の時間で、一人の(おとこ)の生きざまをまざまざと見せつけられた気がしました

 

今日ですべてが 終わるさ  今日ですべてが 変わる

今日ですべてが むくわれる  今日ですべてが 始まるさ

 

力強いギターとその音楽性に、明日に向かって生きる力も授かります

 

映像の最後では、両腕を少し開き気味にお辞儀をし、舞台の袖へ消えていきます

そんな彼の圧倒的歌う力と振る舞いに引き込まれ、映像を見入っていた私でした

 

「格好いい」が「カッコいい♡」と変わり、最後の最後ギターをほいッとスタッフに投げ渡したこの瞬間「かっっけぇー‼」と自然につぶやいていました。

 

「何かと難癖をつけるおやじ」というイメージも、比較的行好意的に受け止めていました

しかし、想像をはるかに超えた「アーティスト」感に驚きを隠せません

 

私の中で「泉谷しげる」さんは、昭和の泥臭くも素敵な役者っていう感じでした

もっと報(むく)われて、もっともっと評価されて欲しいシンガーソングライターなのだと思います

 

でも「泉谷しげる」さん自身は、「人の評価など、そんなの関係ねぇ」とおっしゃる気がします(「オッ・パッ・ピー」などとは決して発っすることはないでしょうが…)

 

2013年末、初出場の紅白で彼は『春夏秋冬』を披露しました

そして歌の途中

「拍手してんじゃねぇ」

そして続けざまに「拍手してんじゃねぇって言ってんだろう!」

紅白を見なくなって久しい私は、先ほどユーチューブでこの場面を知りました

 

「泉谷しげる」さんは言います

俺はテレビの向こうで寂しく過ごしている人に歌ってるんだよ】と・・・

 

 

今日ですべてが 終わるさ  今日ですべてが 変わる

今日ですべてが むくわれる  今日ですべてが 始まるさ

 

P.S.

春(夏)秋冬

 

「春夏秋冬」と書いて「ひととせ」と読むこともできるらしいです

【ひととせ】

① 一年。一年間。

②以前のある年。先年。

上記①の意味から転じたのでしょう

 

「春夏秋冬」ではなく、「春夏冬」と書いて「商い」と読ませるのは有名です(あきないから)

 

では、春と夏がなかったら?

「今よりもずっと涼しくて過ごし安くていいかも」なんてことは申しません

 

「高田みづえ」さん・「原田大輔」さん・「三ツ木清隆」さん競作の『秋冬』が当然残ります

昭和の名曲は永遠に残るのです

 

季節の変わり目を あなたの心で 知るなんて

「中山丈二」さんのこの詩に心打たれます

 

話は戻って『春夏秋冬』

秋の枯葉に 身をつつみ  冬に骨身を さらけだす

 

「泉谷しげる」さんの言動は、ちょっと厳しくぶっきらぼうですが、何故かほわっとする「秋・冬」を連れてきてくれそうな暖かさを感じるのでした

 

 

春をながめる 余裕もなく  夏をのりきる 力もなく

 

恋しいあまりに秋・冬の話題になりましたが、これからが夏本番です

春はともかく、「夏はいらないかも」と思いだしたのはいつ頃からだろうか・・・

ずいぶんといろんな力がなくなったものです

 

私には「春秋冬」で十分です

しゃれた読み方をずいぶん考えたのですが、一向に思いつきません

どれも様(サマー)にならないので、【枕草子】から

 

夏は夜。月のころはさらなり やみもなほ・・・ 雨など降るもをかし

「清少納言」さんは、月が明るい頃は言うまでもないが、闇の頃であっても蛍が飛び交うのが風情があってよろしいとおっしゃっています

 

今を悩める人々のとって、「泉谷しげる」さんの歌は、暗闇の中の一筋の光

蛍の輝きそのものなのでは…

 

”いとをかし”な「夏」と『春夏秋冬』のお話でした。

 

 

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『秋冬』 高田みづえ 原田大輔 三ツ木清隆 1984年 昭和の競作は秀作ぞろい

 

 

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