紫色を基調としたシングルレコードのジャケットが忘れられません
「岩崎宏美」さんの特にファンでもなかった私の部屋には、この作品と『すみれ色の涙』があった気がします
デビューから2年、まだ18歳だった彼女の声は透き通り、どこまでも伸びていきます
直球の速さは高校時代が一番という噂のある「江川卓」さんをなぜか彷彿とさせるのです
天性の才能を武器に「若さ」を身にまとい、惜しげもなく投げ込んでいく二人
この姿を記憶から蘇らせることができる私たち昭和人は、心から幸せ者だと改めて思います
『思秋期』 涙のレコーディングと伸びのある直球
作詞:阿久悠 作・編曲:三木たかし
1977年(昭和52年)、彼女は高校を卒業した3か月後にレコーディングは行われました
岩崎は歌詞の内容に気持ちが高ぶり何度も泣いて歌えなくなり、その日のレコーディングは取りやめになった、という。後に岩崎は阿久に「おじさんの年齢(当時の阿久は40歳)の人が、何故自分の生活や心情が分かるのか不思議でならなかった」と話した (ウィキペディアより)
不安を抱え、涙をこらえ、18歳の少女はこの難しい歌を当たり前のように歌っています
この時点で、ほぼ投球フォームは完成されていたのかもしれません
無口だけれど あたたかい 心を持った あのひとの
別れの言葉 抱きしめ
ここから入るバイオリンの音色とその旋律にうっとりとします
この素敵な歌詞と重な合い、編曲家「三木たかし」さんの偉大さを感じます
二度目の転調でクライマックスを迎えます
壮大なアレンジもここに極まります
無邪気(むじゃき)な春の 語らいや
はなやぐ夏の いたずらや
笑いころげた あれこれ 思う 秋の日
”あれ~これ~”
転調され、さらに高くなったこの部分
「岩崎宏美」さんは、ゆったりとしたフォームで剛速球を投げ込みます
手元のスピードガンでは、165㎞を観測しました
当時に近いであろう、白い襟を付けた赤いドレスで歌うあるYouTubeの生歌映像がありました
(90年代以降になると、残念ながらファルセットで歌う機会が多くなったこの高音域です)
この時期の彼女のパフォーマンスは、人の声の響きの限界や容量をはるかに超えていたと思います
「江川卓」さんがメジャーで通用したかどうかは、誰もわかりません
しかし、彼女のこの当時の切れと艶のある速球は、世界レベルに達していたに違いありません
しかも、「カーブ」しか変化球がなかった江川さんに比べ、多様な表現力と繊細なビブラートを用いる彼女は無敵なのです
カーブで思い出しましたが、ストレートに苦しみながらもインローに多きく曲がる球を、少し泳ぎながらもライトスタンドに叩き込んだ「掛布雅之」さんのバッティングも忘れられません
江川ファンだった私も、なぜか妙に納得したものです
話がそれましたが、結論を言います
「怪物江川」+「職人掛布」+「ビジュアルがいい」=天才歌手「岩崎宏美」
この数式は、令和になっても普遍的に残り続ける気がします。
P.S.
全盛期映像と大谷翔平
もう一度書きます
2年前にユーチューブにアップされた「李平郎」チャンネルの『思秋期』、消される前にぜひ聞いてみてください
まるで「昭和の大谷翔平/女性編」のように、登場しています
打って、投げて、走って、やさしくて、笑顔が素敵で、すべての国民を感動させて・・・
彼女もまた、日本人の誇りなのです
天才編曲家による別バージョン
そしてこの歌には、「萩田光雄」さん編曲バージョンがありました
素晴らしいです
幸せです
時がゆっくりと流れていくようです
年を重ねたせいか、ますますこのバージョンに惹かれていきます
秋の訪れが年々遅くなる昨今、じっくりと「秋」を思ってみたい今日この頃なのでした
P.S. パート2 題名
『思秋期』と題名をつける「阿久悠」さん、さすがです
ペンネームからしてとてもシャレています
この流れで聞きたくなる歌は、もうこれしかありません
「アリス」の名曲『秋止符』
私の大好きな秋がすぐそこまで来てくれました。
了
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岩崎良美 生きる勇気をもらえるハイパフォーマンス 『タッチ』
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