宇崎竜童 阿木燿子のセリフと思いを奏でる

ある日、セルフカバーアルバム『しなやかにしたたかに~女たちへ~』を聴かせていただく機会を授かりました

世界が認める「阿木燿子」

世界の中心でしなやかに愛を叫び、したたかに愛を語られています

 

このアルバムも秀作ぞろいで、中でもとりわけ『とまどいトワイライト』『あるアングル・トライアングル』が特に心に残ります

調べてみると『とまどい…』は「豊島たづみ」さんへ(1979年)、『あるアングル…』は「内藤やす子」さんへ(1977年)と楽曲提供されていました

 

私の大好きなアーティスト、内藤やす子様

確かにこの歌にはぴったりです

ご本人での歌唱はとても楽しみで、クリスマスまで大切に取っておきたい(よくわからんけど…)と思います

 

広く知られた曲も多々ありますが、アレンジの違いも楽しみの一つで、聴く前からのワクワクドキドキがたまりません

ではこのアルバムの代表曲のお話に移らせていただきます

 

『あるアングル・トライアングル』

作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童

 

代表曲と言いましたが、製作者はそんなことは多分考えておらず、私が勝手に決めました

この『あるアングル・トライアングル』、アルバムを代表するばかりでなく、「阿木燿子」作品の頂点をも目指せる物語の構成・内容になっていると確信いたします

 

前奏はもの悲しく、「世にも奇妙な物語」風な幕開けを感じさせます

しかもワルツ、「宇崎竜童」さんに珍しいかと存じます

 

静かなる修羅場

三拍子に揺られながらの男と女、三人三様の人間模様です(それで三拍子だったのですね。今気づきました)

いわゆる三角関係、張りつめた空気が店内に流れ続けています

 

各人物の表情の一つ一つが、はっきりと目に浮かびます

モミアゲのソリ残しまで触れているのはさすがです

行が進むにつれ、「阿木燿子パワー」がひしひしと伝わってきます(秀逸なエッセイと捉えている自分がいます)

 

アコースティックギターの響きが、動きのとれない三人を静かに揺れ動かし始めます

霧に包まれた舞台が、少しづつ鮮明に見えてくるのです

 

こういう時に 男はどうして黙るのだろう

こういう時に 女はどうして泣き出すのだろう

 

主人公の女性は二人を詳細に観察しながらも、自身は他人事のように冷静になるばかりです

 

そこで、ふと思い出されるのが、同じ作者による『絶体絶命』

言わずと知れた、私にとっての神「山口百恵」様の作品です

はっきりカタをつけよ(3回繰り返し)

やってられないわ その人と私のどちらを選ぶの

 

当時の男性たちは皆、この時の百恵ちゃんの神々しいお姿にひれ伏したものです

黒色の透けた衣装といい、にらみをきかせながらも、なおかつ透き通るようなあのまなざしといい…

 

話を戻します

しかし今回の彼女はまったく違います

 

そっとタバコに火をつけ、ぼんやりとおもてを見るともなしに見ています

自分自身、なぜここにいるのかわからないままに・・・

そして、彼女は急に幼い日を思い出します

 

ここまでの描写が素晴らしく、ぜひ一度本物を味わってみてください

 

私は次のように考えます

2番が終ったあとの長ゼリフが始まります

そして、ここにこそこの作品の命がこめられているのではないかと

 

【セリフの内容を一部抜粋し、まとめてみました】

思い出された遠い幼き日、その舞台は片田舎の音楽教室の一場面

皆楽し気に「おもちゃのマーチ」を演奏しています

木琴に鉄琴、横笛・縦笛・ハーモニカ・・・

子供達には人気の楽器の数々です

 

しかし、この少女に回ってくるのはいつでも不人気のトライアングル

やるせない気持ちで奏でたトライアングルのこのときの音を、「阿木燿子」さんは、こう書いています

 

冷たい音色が教室中に響いて、流れるメロディーを小さく区切っていく・・・

他の子供たちと無邪気には同調することが出来なかったあの日あの時

いろんな辛い思い出が、次々と呼び起こされたのかもしれません

 

そしてここからの一文字一文字に、魂を奪われてしまった私の存在が、はっきりと自覚できました

三人三様にもつれた、あや取り。

先ほど書いた「三人三様」、ここから引用しました

 

「三角形の二辺の和は、他の一辺より大きい」

算数の苦手な私には、決して思いつかないだろう素敵な比喩です

 

アーこんなことになるなんて

無意識にぽろっと本音を吐き出す姿も可憐です

 

”底辺叩(たた)けば、皆が泣く”

最後の最後にこの言葉をもう一度繰り返して、この物語を静かに閉じていくのでした

 

底辺を叩くことなど決してできない彼女の姿が、エンディングに合わせて静かに遠ざかっていくのでした

阿木燿子夫妻に身も心も

私といえば、いい小説を読ませていただいた時のような幸福感に包まれました

 

「内藤やす子」さんへ楽曲提供されたのが昭和52年

この時代に先鋭的な曲を創作された「宇崎竜童」さん

一部の隙も無く妥協を一切許さない厳選された言葉を授けてくれた「阿木燿子」さん

このお二人の奇跡の出会いを神に感謝いたします

 

つたない文章を最後まで読んでいただいて心より感謝申し上げます

これからも、いろんなジャンルの曲を取り上げていきたいと思います

 

最後にもう一度『あるアングル・トライアングル』を聴いてみます

 

「底辺叩けば、皆が泣く」という言葉をかみしめながら・・・

主人公の彼女を思いやりながら・・・

そして、百恵ちゃんや阿木燿子さんをこの女性にだぶれせながら・・・

 

 

P.S.

底辺を生き、ついつい底辺を叩いてしまう私には、戒めの歌としても勉強になりました

昭和の名曲は人生の教科書としても生き続けてくれているのかもしれません。

 

宇崎竜童(ダウンタウンブギウギバンド)『知らず知らずのうちに』 奥様とのサクセスストーリーの始まりです

 

 

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